おてがみぼっくす

モラトリアムの終結

過去記事b

最初の幽霊

 

 

ボクは幽霊を信じない。
夜のお墓に行ったって、足の無い女の人はいない。
花束が置かれている交差点を通り過ぎたって、血まみれの透明な人に睨まれたりしない。

動物図鑑や植物図鑑、恐竜図鑑をたくさん読んだ。
何処を見たって、幽霊なんて載っていない。
幽霊はいない。

死んだ僕のお祖母ちゃんが守護霊だって言うけれど、後ろを見たっていない。
殺人事件が起こった公園の近くに住んでいるけれど、遊んでいるのは皆生きてる子供たち。
ほら、いないものはいないんだよ。幽霊なんていないんだ。

ボクは幽霊を信じない。
信じない。

だから友達にも先生にもママにも言った。

「幽霊はいないんだよ!」

友達は、「そんなの皆知ってるよ」と言った。
先生は、「どうしてそう思うの?」と聞いた。
ママは、「そう思うんだったらいないのよ」と笑った。

 

ママが死んだ。
「事故注意」と書かれている交差点で、死んだ。

燃やされて、ママは骨になった。
骨は、理科の教科書に載っている模型みたいなのじゃなくて、小さくて白くて軽くてすぐに崩れる、変な感じのものだった。
骨になったママが入った箱をお墓に埋めた。
ママが死んだ人になった。

ママがいなくなった家の中はシーンとしていた。
時々おじいちゃんが話すけれど、誰もいないみたいに静かだった。

ママはいない。
幽霊はいないから、死んだママが帰ってくることはない。

幽霊はいない。
いてほしいけど、幽霊はいないから、いないんだ。
ママの幽霊、いないかなぁ。

「そう思うんだったら、いないのよ」

記憶の中のママが、笑った。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2011年の短編小説。

当時8歳のイトコに、「一番最初の幽霊って誰だろう?」と言われて書いたもの。

今まで書いた物語の中で唯一まともだと思っている。